2025年3月19日
企業のリスクマネジメント:ハラスメントと損害賠償リスクへの対応策
1.はじめに
近年、企業のリスクマネジメントの重要性がますます高まっています。特に職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)は、企業の社会的信用を損なうだけでなく、法的責任を問われる重大な問題となっています。
厚生労働省の「職場のハラスメント実態調査1」によると、過去3年間で64.2%の企業がパワハラに関する相談を受けたと回答しており、ハラスメント対応は経営リスクの一つとして捉える必要があります。本記事では、ハラスメントによる損害賠償リスクと、企業が取るべきリスクマネジメントの具体策について解説します。
2.ハラスメント訴訟の増加傾向と企業の責任

(1) 訴訟件数の増加と損害賠償の現状
職場でのハラスメント問題に関する訴訟は増加傾向にあり、企業にとって無視できない経営リスクとなっています。厚生労働省のデータによると、ハラスメント関連の相談件数は年間約8万件以上に達し、そのうち訴訟に発展するケースも増加しています。
特に近年では、以下のような訴訟例が注目を集めています。
実際に発生したハラスメント訴訟の事例
- 管理職によるパワハラが認定され、企業が約1000万円の賠償命令を受けた事例
- 職場のいじめによる精神的ストレスが原因で従業員がうつ病を発症し、企業が損害賠償責任を問われた事例
- セクハラ行為により、被害者から企業と加害者双方に対して訴訟が提起され、示談金として500万円以上支払ったケース
これらの事例からもわかるように、企業はハラスメント対策を怠ると多額の賠償責任を負うリスクがあります。企業としては、適切な対応策を講じることが求められます。
3.企業のリスクマネジメントとしてのハラスメント対策

(1) ハラスメントの法的リスク
2020年に改正された「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」により、企業には職場におけるハラスメント対策を講じる義務が課されています。企業が適切な対策を怠った場合、以下のようなリスクが発生します。
- 従業員からの損害賠償請求
- 企業のブランドイメージの低下
- 従業員の士気低下と離職率の増加
- 訴訟による財務的負担
特に、パワハラに起因する訴訟では、数百万円から数千万円規模の損害賠償請求が発生するケースもあり、企業の経営基盤を揺るがす事態になりかねません。
(2) ハラスメントを防ぐために企業ができること
企業がハラスメントの発生を防ぐためには、以下のように対策を実施することが重要です。
- ハラスメント防止のための社内研修の実施
- 匿名相談窓口の設置
- ハラスメントを防止するための行動規範の明確化
- 管理職へのハラスメント対応トレーニング
- 被害者が安全に相談できる環境の整備
従業員の安心を整えることが、企業の安定へと繋がります。専門家や第三者の意見を参考にしながら、リスク対策をしっかりと行いましょう。
4.ハラスメントによる賠償責任リスクを補償する保険とは?
どれだけ経営者が対策を講じていても、すべての従業員をコントロールする事は不可能です。マネジメントの一環として、賠償責任リスクをカバーする損害保険などを活用しましょう。
(1) 雇用慣行賠償責任保険
雇用慣行賠償責任保険とは、雇用関係において負うリスクを補償する保険です。主に、企業の人事管理に関する紛争や違法な雇用行為が原因となる訴訟リスクをカバーします。
主な使用例
- 不当解雇、降格や減給といった雇用に関する訴訟
- 雇用契約違反、労働基準法違反に関する損害賠償請求
- 差別的行為や人格権の侵害による訴訟費用の補償
- パワハラ、セクハラなどのハラスメントによる慰謝料
賠償金・和解金のほか、弁護士費用、社内調査費用なども支払い対象となります。
(2) 使用者賠償責任保険
使用者賠償責任保険では、従業員が業務中に被った負傷や疾病に関連する損害賠償リスクをカバーします。
主な使用例
- 事故や過重労働による健康被害の損害賠償請求
- 企業の安全配慮義務違反による訴訟
- 労災認定後の追加賠償請求への対応
治療費や休業損害のほか、訴訟費用、協力費用なども支払い対象となります。
5.企業がハラスメントリスクに備えるべき理由

ハラスメント対策は単なるコンプライアンスの問題ではなく、企業の経営基盤を守る重要な施策です。
(1) 訴訟リスクを軽減し、企業の財務基盤を守る
訴訟は企業にとって財務リスクとなるだけでなく、訴訟対応にかかる時間やコストの負担も大きくなります。適切な保険に加入することで、訴訟にかかる負担を軽減できます。
(2) 従業員の安心感を高め、職場環境を改善する
ハラスメント対策が整っている企業では、従業員の心理的安全性が向上し、生産性の向上や優秀な人材の確保につながります。
(3) 社会的信頼を維持し、企業価値を向上させる
企業がハラスメント対策を怠った場合、メディア報道やSNS拡散によって企業ブランドの信頼が大きく損なわれるリスクがあります。
6.まとめ
パワハラやセクハラによる損害賠償リスクは、企業にとって深刻な経営課題です。しかし、適切なリスク管理と保険の活用により、企業の負担を軽減し、持続的な成長へ導きます。
企業がハラスメント対策を強化することで、訴訟リスクの軽減、従業員の安心感の向上、社会的信頼の維持といった多くのメリットを享受できます。賠償責任保険を適切に活用することで、企業の法的・財務的リスクを最小限に抑えることが可能です。
一方で、ハラスメント対策は保険だけでは不十分であり、企業の内部施策として「ハラスメント防止研修の実施」「内部通報制度の整備」「管理職の意識改革」など、多面的なアプローチが必要になります。
トウマトータルビジネスでは、企業のリスクマネジメントを支援し、保険を活用した総合的なハラスメント対策の提案を行っています。リスクを適切に管理し、企業価値を守るためにも、ぜひ専門家のアドバイスを活用してください。